2スト500ccの迫力バトルは今も目に焼き付く
すでに180psに達しようとしていた2ストロークエンジンならではの暴れ馬的挙動と、ワンオフ感漂うモンスターマシン──80年代末〜90年代初頭におけるWGP500ccクラスでは、ロスマンズ 、マールボロ、ラッキーストライクといった世界的なタバコメーカーが二輪のロードレース世界選手権でも各メーカーやチームを積極的にサポート。サーキットではタバコスポンサーのGP500レーサーがスリリングな一大バトルを繰り広げていました。
もうその熱量たるや筆舌に尽くし難いものがあったのですが、ただしこれが意味したのは「タバコロゴデカール問題(未成年が手にするプラスチックモデルにタバコスポンサーのロゴを入れることができない)」という案件でした。
その結果、スズキRGV-Γ&ケビン・シュワンツというモチーフにこだわったF社は、シュワンツのWGP500デビューイヤーのマシンであるスズキ RGV-Γ後期型(XR74) 1988年チーム ペプシ スズキという、タバコスポンサーを避けたモデル化選択にて2013年2月に1/12スケールキットをリリースするに至ります。
もちろん、1988年型XR74にも多大なニーズはありましたし、これはこれで非常にうれしい製品化でした。
ただし、シュワンツのファンからすればやはり、念願のチャンピオンを獲得した1993年型XR79が製品化されなければ精神的な落としどころが見つからなかったのです。
そして、F社による1988年型XR74の製品化からちょうど10年を経た2024年春。プラッツ/BEEMAXからついに1993年型XR79の製品化が発表されたのでした(ちなみに薄々感付いている方もいるかと思いますが、BEEMAXとmumuはじつは同じ会社です。いまのところ1/20や1/12のF1モデルなどでBEEMAXブランドを使っていますが、1/12のGP500レーサーもBEEMAXブランドで製品化されることと相成ったわけです)。
もちろん、残念ながらラッキーストライクのタバコスポンサーデカールは付属していません。(ただし、タバコ広告禁止国仕様である“TEAM SUZUKI”のデカールはきちんと付属しています。)
それでも完全新設計・新金型の1993年型XR79がいま手に入るその喜びの大きさを考えれば、あなたがスズキRGV-Γ&ケビン・シュワンツのファンならば、そうした問題は必ずや吹き飛んでしまうはず!
最新金型での再現に注目
なお、キットは「2020年代スタンダード」なこまやかな作りで、3D CAD/CAMを駆使した設計ゆえ、カウル内の補機類とカウルとがスレスレの間隔で共存するあたりは唸らされるばかり。
2ストエンジンならではのチャンバーの取りまわしなど、カウルを取り外した際の見どころが多いのもGP500レーサーならでは、です。フレームもいわゆる「肉抜き成型」ではなく、フレーム裏側にもきちんとフタをするパーツが存在し、それを貼り合わせることで肉厚部分を再現する徹底ぶり。当然ながら、溶接のディテールもきちんと再現されています。
さらに、本来ならばディテールアップパーツセットに付属しているようなブレーキやオイルライン用のビニールパイプの類いも、キット本体に付属するのはうれしい配慮と言えるはずです。
デカールのチャンピオンナンバー1に見るシュワンツの思い
ちなみに、これは以前もお伝えしましたが、デカールにはシュワンツのバイクナンバーである34のみならず、93年のチームメイトであったアレックス・バロスの9、さらに、チャンピオンナンバーである1も付属しています。
シュワンツ的には長年連れ添った34に親しみがあったらしく、1の中央に小さく”34”が描かれているのがマニアックな注目ポイント。シュワンツマニアの方ならば思わずニヤリとできる箇所だと思います。
長い手足を折り畳むような独特のライディングスタイルで、まるでロデオのような破天荒な走りを見せたシュワンツと、その相棒たるスズキ RGV-Γ(XR79)。未だ2ストの亡霊から逃れることのできない人にとって、これ以上美味しいアイテムはないはずです。
1/12 シリーズ スズキ RGV-Γ (XR79) 1993 WGP500 チャンピオン
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