
完全新設計・新金型の『マクラーレンMP4/4 1988 ワールドチャンピオン』!
2024年10月末に東京ビッグサイトで開催された第62回全日本模型ホビーショーにおいて、いよいよその全貌をあらわにしたプラッツ/BEEMAXの1/12フォーミュラシリーズ第2弾、マクラーレンMP4/4 1988 ワールドチャンピオン。2025月6月発売予定で、もちろん完全新設計・新金型によるプロダクトです!
先に発売になった1/12 ロータス99T 1987 モナコGPウィナーの内容を知っている人からすれば「このような仕上がりになっているはず」という目測が成り立っていたと思いますが、正直に言って、プラッツのスタッフもその繊細かつダイナミックな仕上がり具合に少々驚いたほどです。
一作ごとに明らかにクオリティアップしていく、BEEMAX=nunuの勢いを感じさせる逸品と言うことができるでしょう。

それでは過去のブログの繰り返しになるかもしれませんが、実車解説を少々。
マクラーレンMP4/4は88年シーズンに向けマクラーレン&ホンダが投入したマシンで、そのステアリングを握ったのが当時最速コンビと言われたアラン・プロストとアイルトン・セナ。彼らふたりによるドライビングにてシーズン16戦中15勝(セナ8勝/プロスト7勝)をマークしたことで、いまなお「F1史上最速最強のマシン」と謳われている一台です(なお、唯一勝利を逃した第12戦イタリアGPも、体調不良で欠場したナイジェル・マンセルのスポット要員としてウィリアムズで出走することになったジャン・ルイ・シュレッサーのコースアウトに巻き込まれたセナのリタイアによる結果であり、この不運なリタイアが存在しなければ16戦全勝が記録されていたことにまちがいありません)。


MP4/4はブラバムから移籍してきた“鬼才”ゴードン・マレーの手によるデザインで、そこにマクラーレンの職人肌デザイナーであるスティーブ・ニコルズとニール・オートレイが手を貸すことにより完成を見たマシンです。
マレーはMP4/3まで続いた大柄で縦長なスタイルから一変した、ブラバム在籍時にデザインを手掛けた1986年シーズン用ブラバムBT55 BMW(“フラットフィッシュ=ヒラメ”の異名を取ったマシン)とよく似た、全高が低くドラッグが少ないデザインを採用。マレーの風洞実験によるデータでは、シート角度を通常よりも寝た姿勢となる35度にすることで、じつに7%も優れた空力特性を得られる利点が判明していたといいます。

そうした風洞実験データを見せられたニコルズとオートレイは同コンセプトを導入することに賛同し、MP4/4のデザインの方向性は決定します。
搭載したホンダのRA168E V6ターボエンジンも、前年型のRA167Eからクラッチとフライホイールを小径化することなどで全高は50mm以上、クランクシャフト位置は28mm下げられ、ワイズマンシステムを基にした3軸ギアボックスの採用など、各部に低重心化が図られていきました(モノコックを低くしたためフロントサスペンションは前年までのようなプッシュロッドがレイアウトできず、ガイドローラーを介したプルロッドとなったのは低重心化の顕著な例のひとつです)。


そしていざ88年シーズンが開幕してみるとマクラーレンの2台は飛び抜けた速さを誇り、第15戦日本GPにおける劇的な展開をもってセナがチームメイトのプロストを下し初のドライバーズチャンピオンを獲得(チームオーダーの存在しないジョイントナンバーワン体制だからこそ、セナはプロストを抜き去ることに成功しました)。
そして前述したように、セナとプロストはふたりで16戦15勝を挙げて文句なしにマクラーレンへコンストラクターズチャンピオンをもたらし、マクラーレンMP4/4ホンダは当時を知る多くのF1ファンの記憶に色濃く残るマシンとなったのです。
2020年代における1/12 F1モデルのビッグスケールキット!
それではいよいよその全貌をあらわにした、プラッツ/BEEMAXの1/12 マクラーレンMP4/4 1988 ワールドチャンピオンのキットに対し目を向けてみましょう。
まず最初のポイントとして挙げられるのは、このキットが「2020年代における3D CAD/CAM(3Dコンピュータ援用設計製造)技術に基づく非常にマニアックでぬかりのない製品である」という点です。

というのも──リアルタイムの88年10月にはT社から1/20名作キットが発売されていますが、パーツ数をなるだけ削減するというコンセプトのためカウル内部の補機類等が完全再現されていたとは言い難く(パーツ数が増えすぎると組み立て難度が高くなり、どうしてもモデル製作初心者が脱落してしまうという足枷が課さられます)、さらに、プラッツ/BEEMAXの1/12キットでは3D CAD/CAMを駆使したパーツのすり合わせによってカウル内部のエンジン等が実車と同様のサイズにて再現できており(3D CAD/CAM導入以前の手描き図面と木型によるアナログ設計では、カウルと内部パーツが接触しないように内部パーツを若干小さめに設計するしかなかった)、「2024年の今だからこそ設計製造することのできた1/12 F1モデル」であることに着目してみてほしいのです。
さらに言うと、実際にランナーを手に取って眺めてみると1/20 F1のキットとは比べ物にならないほどの情報量を有しており、「……なるほど、これが2020年代における1/12 F1モデルのビッグスケールキットなのか!」と驚くこと請け合いです。
ちなみに初回限定特典としてレインタイヤが付属しますが(完成後もスリックタイヤと付け替えて楽しむことが可能です)、レインタイヤ✕マクラーレンMP4/4と言えば、第3戦モナコGPにおいてセナがウエットコンディションの予選で見事な走りを見せポールポジションを獲得した際、その足元に履かれていたのがグッドイヤー製のレインタイヤでした。
というわけで、セナのファンならばそうしたモナコGP予選仕様を再現できるたまらない限定特典ですよね(何せ、自作でゼロからゴム的質感のレインタイヤを製作するのは、大変な技術と財力を必要としますので)。


なお、専用ディテールアップパーツも同時発売予定で、こちらには前後の翼端板やラジエター、ブレーキディスクなどをよりリアルに再現するためのエッチングパーツをはじめ、金属製のシャフト類、質感の高いシートベルト、CFRP=カーボンファイバーコンポジット地が剥き出しの箇所に貼るためのデカールなどがワンセットにまとまっており、別々に買い揃える手間も省ける一石二鳥的な製品となっています。


もちろん、それでも「未成年がモデルカーを通じタバコに興味を抱く可能性がある」という理由からキットにもディテールアップパーツにもマールボロのロゴデカールは残念ながら付属しませんが、そこはサードパーティに任せるとして、じつに36年という年月を越え現代に蘇ったF1モデルの1/12スケールキットをぜひとも楽しんでみてください!
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