1/110 アトラス・ロケット マーキュリーカプセル付き キットを覗いてみた。
2019年は宇宙ファンにはいろいろと話題の年でしたね。はやぶさ2の活躍、そして何より、あの月面着陸を実現したアポロ11号の快挙から50年の記念の年、近いところではトラブルはあったものの新たなアメリカの有人宇宙ロケットプロジェクトのスタート、さらに、太陽系からやってくる彗星や2度もあった日食などなど。
そんな中、プラモデルの世界でも今年は宇宙もの、特にアポロ計画に関するキットの発売などは多かったですね。
そうした流れの中で、これもそんなキットと言えるでしょうか。アトランティスからリリースされた1/110アトラス・ロケットです。1959年から63年にかけて実施されたアメリカの有人飛行計画「マーキュリー計画」に使用されたロケットでした。
キットはアトラスロケットを使ったフレンドシップ7をモデル化しています。
もともとはレベルから販売されていたキットで、今回はアトランティスモデルからの再登場となっています。1960年代のキットですが、ロケット本体はもちろん、楽しいのは発射台や関係車両などもモデル化されていること。主役のロケットはもとより、この発射台がメカニカルな仕上がりなんです。
まずはパーツを見てみましょう。
今のキットとは装いが随分違います。最近のキットでは当たり前のレイアウトの周りの枠が無い。古典キットなどにはよく見られる形だと思います。パーツが傷つきやすいので組立作業ではちょっと気をつけたいですね。
そんな昔のキットだと組み立てが、と心配される方も多いかもしれません。ところがこれが意外とパーツの組み立てにおける合わせは悪くなかったりするんですね。
というのも、このキットがそうなのかは定かではありませんが、この時代、製図板の上で描かれた各部品の図面に従って製品となる縮尺の倍の大きさくらいで木製のパーツが製作されます。その一つ一つの木製パーツで合わせを確認した後、再度一つ一つのパーツを金型に置き換える作業が行われます。その作業は立体縮小彫刻機という機械を使って行われます。
この機械、文具の中でパンタグラフのような構造で、片側の図面をなぞると拡大されたり、縮小されたりして同じ図形が別の紙に描かれるというものの3次元バージョンとでも言える機械です。ということは、パーツは実際のパーツの木型をそのままなぞっているのですから、合わないわけがないと思うんです。
楽しいのは説明書の最初の方にある表。もちろん英語なんで最初は何が書かれているのかわからずにいたんですが、よく見たらプラスチックの各パーツの一つ一つの名称(実物に即した名称)が書かれているんですよ。例えばエンジンプレートだとか、胴体右だとかミサイルエレベーターシリンダーだとか。これってすごくワクワクしませんか。モデラーとしては味気ない単なるパーツ番号だけでなく、実物のこのパーツの一部ですと説明してくれると組み立てる楽しさも広がるというものではないでしょうか。
また、モデルの主役としてはロケット本体なんでしょうけど、模型としてみると発射台が気になっちゃうんですよね。この手摺やラダーなどの細かな再現がリアリティを高めてくれるのはもちろんなんですが、発射のときに活躍する?各種のサポート車両っていうんでしょうか、トラックなどモデル化されてセットされているんです。発射台の大きさも比較できてついつい目が行きます。
いよいよ本体のお話。アトラスロケットとその先端に取り付けられたマーキュリーカプセル。マーキュリーの中にはこのフレンドシップでアメリカ人初の有人地球軌道周回飛行を実現したジョン・グレン飛行士を再現したフィギュアも再現されていますよ。
このキットを見ていると米ソが宇宙開発競争に力を注いでいた時代、その時代の熱気、熱さが伝わってくるようなキットだと思います。
新たな宇宙開発が話題を集める今こそ作っていただきたいキットでしょう。