ワークスにおいてもプライベーターにおいても、スポーツカーレースのカテゴリーに対しつねにトップ争いに絡み続けるポルシェ。中でも、「世界一過酷な自動車レース」として知られるフランスのル・マン24時間レースに関しては、最多総合優勝記録を誇る重要なスポーツカーメーカーとして長年多くのファンから注視されています。
ピンクピッグの歴史を知る
そんなポルシェが1971年のル・マン24時間レースに投じたマシンである917/20クーペは、ワイドボディ化とショートテール化のモディファイが成された、実験的でエキサイティングな外観を有する一台でした。全面ピンクの塗装仕立てで、精肉店に掲げられた豚の部位の図のように、各構成部品を視覚的に区別したアイディアはポルシェのデザインスタジオが考案したもの。そのずんぐりむっくりなフォルムと、ピンク地+精肉店に掲げられる図から、“ピンクピッグ”の愛称にて親しまれました。
また、ユニークなスタイル&ボディカラーとは異なり戦闘力は予想と反して高かったようで、1971年のル・マンでも一時は3位まで順位を上げており(最終結果はクラッシュによるダメージもあって、残念なことにリタイアとなってしまいましたが)、現在でも人気の高いレーシングポルシェのひとつとして世界中の幅広いポルシェファンから愛され続けています。
1971年の雪辱を果たした2018年の911
時は流れて2018年。この年は、1948年にオーストリア グミュントでポルシェ356の第1号車が誕生してからちょうど70年という節目の年でした。サーキットにおける幾多の栄光と共に、歴史に名を刻む数々のロードカーを創り出し、世界中の多くの人々が愛情と情熱をもって乗り続けてもらえるスポーツカーブランドへと成長を遂げたことを記念し、この年の第86回ル・マン24時間レースにポルシェはLM GTEクラスのマシン4台中の1台(カーナンバー92)に対し特別なカラーリングを施したのです。
その1台とは全面ピンク一色の、そう、ピンクピッグ仕立て! 1971年にル・マン24時間レースを戦った、かの917/20における特殊なカラーリングをリバイバルして見せたのでした。 その粋な演出に対しポルシェファンたちは鳴り止まらない拍手を送り続けたのですが、なんとも劇的なことに、ピンクピッグ仕立ての911(タイプ991)RSRはル・マン24時間レースのLM GTEクラスで優勝を成し遂げてしまう結果をもたらします。
1971年の悔しいリタイヤからじつに47年、ようやくここで溜飲を下げたピンクピッグ。この劇的なストーリーを1/24スケールキットで愉しむことができるのが、プラッツ/nunu製のポルシェ911(タイプ991)RSR 2018 ル・マン24時間レース クラスウィナーというわけです。
完全新金型でプラッツ/nunuが2018年のピンクピッグを再現
それではキット内容に目を移して見ていきましょう。
モデルは2018年のル・マン24時間レースでクラス優勝を遂げたポルシェ911(タイプ991)RSRを再現したプラスチックモデル組み立てキットで、仕上がり全長約195mm、全幅約80mmで迫力溢れるLM GTEクラスマシンならではのボディスタイルを実感たっぷりに再現しています。
キットは当然ながら完全新設計・完全新金型によるもので、やはり誰もがまず気になるのはボディ形状、とりわけルーフ形状の再現具合でしょう。911系ポルシェの場合、それがレーシングカーであろうがロードカーであろうがルーフ形状がきちんと再現できていないともうそれだけで「アウト!」なわけですが、このキットではルーフ形状の再現度がすばらしく、これまで無数のモデルメーカーから製品化された数多くの911系ポルシェの中でも群を抜いた出来栄えと言えるはずです。
ボディフォルムに目を通していくと次に気になるのが、フロントノーズ上におけるNACAダクトやエアアウトレットなどのスリットの抜け具合。ここも手抜かりなく、現代的なレーシングカーとしてスパルタンな雰囲気を盛り上げています。
ウインドウの枠をきれいに仕上げるのに便利なマスキングシートも用意されているのも嬉しいですね。
また、路面へへばりついたかのような太いタイヤと低重心フォルムの再現も見事のひとことで、LM GTEクラスマシンの雰囲気を的確に表現しているあたりもさすがと言うことができるでしょう。
見事な再現のボディに注目のカラーリング
さらに、気になるピンクピッグのグラフィックは、下地のピンク塗装+非常に貼りやすく伸びがある大版のデカールシートにて再現。室内は安全性を高めるためのロールケージ(4パーツ構成)や、消化器、こまかなボタンだらけの近代的なステアリングホイールなどもしっかりと立体化されており、シャーシ下面もサスペンションなどを別パーツで用意することで立体感十分な仕上がりを演出。2020年代基準の厳しい目で眺めても即合格点が出せるはずです。
専用ディテールアップパーツにはカーボンデカールも
なお、同時発売となる別売の純正専用ディテールアップパーツセットには、各部に使用するエッチングパーツ、シートベルト、アンテナ、カーボンファイバー地デカールなどのマルチマテリアルな素材が入っているため、これらを利用すればより簡単に一層リアリティの高いマシンへ組み上げることが可能となっています。
1971年のピンクピッグのことを知らぬ人でも楽しめる、しかし古の歴史を知ればさらに10倍楽しめるアイテム──それこそがこのポルシェ911(タイプ991)RSR 2018ル・マン24時間レース クラスウィナーと言うことができるでしょう。