
ラリーカーをメインとしたラインナップで定評のある、ベルギーのプラスチックモデルメーカー“ベルキット”。以前はほかの国内モデルメーカーが輸入代理を担当していましたが、いま現在はプラッツがその役割を担っており、プラッツによる組み立て説明書の日本語補書も付属しているので安心して購入することができます。
オペル アスコナ400 1981 モンテカルロ ラリー
それではまず、実車解説から入っていきましょう。
ラリーカーとして活躍したオペル アスコナ400(3代目)は、1981年にGMのJカープロジェクトの一環として発表された車輌です(姉妹車にいすゞアスカがあります)。
カデットGT/Eによる世界ラリー選手権(=WRC)参戦で手応えを感じたオペルのワークスチーム、GMユーロ ハンドラーの監督で、英国のチューナーでもあるD.O.T.のトニー・ホールは、カデットの後継車としてグループ2仕様のアスコナBをベースにグループ4仕様とすることを決断します。
その結果、エアダム スカート、ボンネット上のフィン、リア スポイラーなどのエアロパーツで武装し、ボンネットをFRP化したボディに、オペル市販車としては初のDOHC 16バルブヘッドを装備した直列4気筒エンジンを搭載することに決定。排気量は2410ccに拡大され、240馬力を発生しました。
こうしてオペルはアスコナ400を1979年11月に発表します。
これに伴い、グループ4のホモロゲーションモデル400台が製作・販売されるに至ります。駆動は一般的なフロントエンジン✕リアドライブ方式を採用。こうしてWRC参戦の準備が整うこととなりました。

この結果、アスコナ400は1980年からWRCの参戦を開始。1981年にはパブリモ ビールのスポンサーを獲得、モンテカルロ ラリーでは3位と4位に入賞します。
ただしサファリ ラリーでは牛と衝突しリタイアするなど結果が出せず、シーズン途中でパブリモ ビールはスポンサーから撤退。エースドライバーのアンダー・クーラングもチームを去ってしまいます。
もっとも1982年、ロスマンズがスポンサーに就き体制を新たにすると、ドライバーにヴァルター・ロールとヘンリ・トイヴォネンを迎え、初戦のモンテカルロ ラリーではドライ コンディションにも助けられ、ルノー5 ターボやアウディ クワトロなどの並み居る強豪を退けロールが優勝。その後も2位2回、3位1回、コートジボワール ラリーでの優勝と、上々の成績を挙げることになります。

そして、1982年にはロールがオペルにとって初のドライバーズ タイトルを獲得。メイクス タイトルはアウディに次ぐ2位となり、グループ4時代終端の、FRマシン最後のチャンピオンを飾るに至りました。
完全新金型のベルキット製キット
それではベルキット製のキットに目を通してみましょう。

キットは完全新規金型によるもので、1980年から1983年にかけてWRCで活躍した、オペル アスコナ400のグループ4仕様のマシン(1981年の開幕戦、モンテカルロ ラリーで3位に入賞したヨッヒ・クライントのマシン)を1/24スケールで再現したプラスチックモデルです。パッケージから発せられる「いかにも欧州メーカーなプラスチックモデルの香り」に対し一瞬躊躇してしまう人もいるかと思いますが、キットの内容は2020年代スタンダードそのもの。そして、パッケージ天面に日本語で書かれた「日本語対訳付き組立説明書付属」のひとことが心強いですね。


ボディはグループ4マシンならではのワイドなオーバーフェンダーやリアスポイラー、フロントスカートなどを装備したスタイルを一体成形で再現。オーバーフェンダーに刻印されているボルトは、グループ4仕様ならではの迫力に満ち溢れています。
コクピットはダッシュボードに装備されるラリー装備のメーター類やフロアのフットレスト、ロールケージなど、別パーツで立体的にモデル化。シャシー下面のサスペンションなどのメカニズムも詳細に再現されており、ラリーカーならではの醍醐味が否応なしに伝わってきます。

また、各所でピンポイント式に使われるデフォルトで付属するエッチングパーツは、ノーズ先端におけるオペルのロゴやドアノブ、リア トランクの固定バンドなどで使用。マーキングは先述した1981年のWRC開幕戦モンテカルロ ラリー仕様(同ラリーで3位に入賞したヨッヒ・クライントのマシン)を再現しています。
デカールは高品質なシルクスクリーン印刷で知られるイタリアのカルトグラフ製を採用、マーキングの透けは一切生じず、デカール自体の伸びもよくその貼りやすさに驚きを覚えるはずです。
さらに、ウインドウの窓枠塗装に便利なマスキングシートもデフォルトでセット。モデラーにとってはじつにうれしい配慮と言えるでしょう。
中国系の新進メーカーであるnunuやBEEMAXの物量攻撃には敵いませんが、じっくりと時間をかけてプロダクト作成に取り込むベルキットのその姿は「愚直」のひとこと。貴方もこのキットを手にすれば、ベルキットの真摯な姿勢が伝わると思います。
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