WRCを制したアウディは、次はどこを目指したのか?1/24 アウディ A4 クワトロ 1996 BTCCチャンピオンで紐解く4WD✕イギリス ツーリングカー選手権における熱戦の記憶

プラモデルキット

 7月に発売された製品なのですでにキットを手にしている方もいらっしゃるかもしれませんが、プラッツ/nunuの1/24 アウディ A4 クワトロ 1996 BTCCチャンピオンに関して、しつこいようですがもう一度ブログを綴らせていただきますね。このキット(もちろん完全新金型です)に関しては、とにかく綴っておくべきことが山ほどあるので。

 それではさっそく実車解説から入りましょう(初回のブログとできるだけ内容が被らないようにがんばります!)。

 WRC(世界ラリー選手権)では開幕初年度である1973年のジープ・ワゴニアの優勝以来、四輪駆動車=4WDの参戦は禁止されていましたが、アウディはFIA(国際自動車連盟)に働きかけて4WDによるWSC参戦を解禁させました(これもよくよく考えるとすごい話なのですが……)。

 その後、ラリーの世界に4WDの最新テクノロジーを持ち込み、圧倒的な力を見せつけたアウディ。しかし1987年のグループAによる200クワトロでの参戦を最後に、アウディはWRCから撤退してしまいます。これ以降、「クワトロショック(クワトロ=イタリア語で“4”を意味する)」と呼ばれるほどに至ったアウディ シュポルト ファクトリーチーム(アウディのワークスチーム)によるWRC参戦は、現在に至るまで行われていません。

 では、アウディはその後どこを目指したのでしょうか?
 答えはサーキットレースへの4WDでの挑戦でした。

 4ドアセダンのA4 クワトロをベースに開発されたマシンは、クラス2のツーリングカーレースへ1995年にデビューし、翌1996年にはBTCC(イギリス ツーリングカー選手権)への参戦もスタート。エンジンは300馬力以上を発揮した直列4気筒2リッターを縦置きにし、6速のシーケンシャルギアボックスを介してクワトロシステムで4輪にパワーを伝える構造を採用していました。「ツーリングカーの4WD化は車重がやたらと重たくなるし、そもそも2WDでも充分速いのでは?」という先入観を覆し、4WDのA4 クワトロは2WDマシンに対して100kgのウエイトハンディを課せられながら、ドライバーのフランク・ビエラと共に1996年のBTCCでチャンピオンを獲得。舗装路面を舞台とするサーキットコースでのレースでも、4WDの有効性を実証してみせたのです。

 それでは、肝心なキットの説明に移らせていただきます。

 このキットを組み立て説明書どおりの順序で組み上げようとした際、いちばん最初の組み立て段階で、とある「儀式」が行なわれます。その儀式とは、4WD用のドライブシャフトをシャシー下面に取り付けることです。
 見た目は普通の乗用車のようなA4 クワトロですが(オーバーフェンダーが付いているわけでもなく、4ドアのセダンである旨が余計そう見えることに拍車をかけているのでしょう)、完成したら見えなくなってしまうボディ下面に先鋭的な4WDテクノロジーを垣間見ることができるわけです。

 さらに付け加えると、シャシー下面にはドライブシャフト以外にも見どころがあります。パーツの組み付け後はフロントサスペンションを覆い隠してしまう、ノーズ下面に装着するフロントスポイラーパーツです。このフロントスポイラーには大小合わせて15個ものNACAダクトがびっしりと並んでおり、A4 クワトロにおける空力デザインが主にボディ下面で行なわれている様子がまさしく「手で取るように見て取れる」のです。この「パーツを組み付けながら実車の構造を知ることができる」というプロダクトに仕上がったことは、nunuにとってはうれしい誤算であったかもしれません。

 また、コンペティションモデルならではのコクピットの表情などに至るまで、組み立てやすさも考慮しながら正確に再現。コクピットフロアのパーツは毎度のようにバルクヘッドのリブ模様などがきちんと彫刻されており、ディテールをしっかりと再現する仕上がり具合には誰でも好感が持てるはず。このマシンが言わば「羊の皮を被った狼」である旨は、贅肉を削りまくったコクピットやロールケージを組み立てていても気付くことができるはずです。

 なお、マーキングは1996年シーズンにBTCCでシリーズチャンピオンを獲得したアウディ・スポーツUKのフランク・ビエラのマシンであるカーナンバー45と、ジョン・ビンチクリフトのカーナンバー44を用意。ボディにデザインされた巨大なアウディのエンブレム=赤い4つの輪も、大判のデカールにて再現しています。
 それに加え、ウィンドウの縁の黒い部分を塗るためのマスキングシートが付属しているのは、モデラーの立場を考えたありがたい配慮ですね。

 ちなみにこれはプラッツ/nunu製品ではお約束の展開なのですが、別売品として専用のディテールアップパーツが用意されています。エッチングパーツとシートベルト素材、カーボンファイバーコンポジット地を再現するためのデカール、そして、アンテナの金属パーツのセットで、これを用いればキットの持つポテンシャルをさらに高めることに繋がること請け合いです。

 というわけでツーリングカーレースの歴史に新しい時代を開いた魅惑のマシンを、貴方のコレクションに加えてみてはいかがでしょうか?

1/24 レーシングシリーズ アウディ A4 クワトロ 1996 BTCCチャンピオン 4,730円(税込)

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