1984年の世界ラリー選手権に参加を決めたポルシェ
プラッツ/nunuによる人気の既存製品が、久々に再生産されます。件のアイテムは、1984年のオマーン ラリーで優勝したポルシェ911 SC/RSを再現したモデルです。
それではまず、実車解説から。

1984年の世界ラリー選手権(=WRC)に参加を決めたポルシェは、グループBのホモロゲーションを取得するために20台の特別な車輌を生産しました。これこそが911 SC/RSなる稀有なマシンです。
ボディはワイドトレッドタイヤ装着用のブリスターフェンダー化を施し、足回りも強化。フロントフードと両ドアは軽量化のためアルミ製のものを採用し、ガラスもすべて薄いタイプに変更されています。
また、前後バンパーはこの車輌専用のデザインで非常に軽量なものとなっており、トランクフードの下にはちいさなガソリンタンクとツインマスター構造のブレーキが装着されることに。エンジンフードに収まる空冷6気筒エンジンは270psを発揮、低く乾いた迫力あるエグゾースト ノートは明らかにスタンダードの911とは異なるドライバーをワクワクさせてくれるサウンドでした。

なお、インテリアは独特な形状のバケットシートが2脚装着され、4点式ハーネスもスライド式を採用する凝った造りとなっていた点も見逃せません。このバケットシートはホールド性が抜群で、シートスポンジの肉厚もあるため乗り心地が驚くほどよかったと言われています。ノンパワーのステアリングも大径なためか、まったく重さを感じない優れたインフォメーションをドライバーに伝えてくれたのです。
そして当キットは、そんな911 SC/RSをラリー仕様に改造したものを製品化しています。
多くのグループBマシンは元の車輌のデザインが残っていないほどの大改造が施されており、チームによっては「ホモロゲーションを取得するだけのために製造された大人げないマシン」というものも存在したのですが、そこはさすがの重鎮ポルシェ。
すでに4WD+ターボが必須となっていた同カテゴリーにおいて後輪駆動+自然吸気3リッターSOHCエンジンで闘うのは時代遅れである旨を知りつつ、それでも「一見しただけではスタンダードな911に見える」というスタイルを選択したあたりが「大人の仕事」であったと言えるのではないでしょうか。

それだけでなく、そんな時代遅れの駆動系を持つマシンながら、1984年のオマール ラリーで勝利を記録してしまったのはいかにも堅物っぽいポルシェならでは。ポルシェ ファンからすれば、こういったところが応援したくなるポイントなのでしょう。
オススメの専用ディテールアップパーツセット
それではキット内容に目を通してみます。
まず最初に、このキットに関しては「そうしたほうが絶対によい」と半ば強制的に言わせていただきたいことがあります。それは「別売の専用ディテールアップパーツセットも併せて購入したほうがよい」ということです。「専用ディテールアップパーツセットなど買わなくても、自分でディテールアップするから問題ない」と語るアナタ! そう、アナタですよアナタ! じつは筆者も「自分でディテールアップできる人は別売の専用ディテールアップパーツセットなど買う必要がない」と思っている派なのですが、本キットとその専用ディテールアップパーツセットに関しては話は別。これからその理由を説明しますが、とにかく別売の専用ディテールアップパーツセットを購入することをオススメします。
それでは改めてキット内容と、その専用ディテールアップパーツセットを見ていくことにしたいと思います。


キットはnunuスタンダードに基づく内容で、エクステリアやコクピットの再現度はいつもどおりのハイクオリティ。さらに、マシンの裏面には時代遅れなRRドライブであることが一目瞭然な造形が成されており、基本的には「そのまま組み立てればOK(とくに手を入れる必要なし)」という内容に仕上がっています。直線部分と曲線部分が入り乱れたストライプの塗り分けが困難なボディカラーの再現用に、ボディカラー用マスキングシートがデフォルトで付属するのはモデラーにとってありがたい配慮ですね。


ただし、ここで頭をもたげてくるのが、先述した「別売の専用ディテールアップパーツセットも併せて購入したほうが絶対によい」という問題です。
キットに付属するアンダーガード類(マシンの底面に、ノーズ先端から車体後方に向け装着するパーツ)やマットガード(泥除け)は普通にプラスチックで成形されているのですが、プラスチック成形ゆえにその薄さには限界があり、実車のそれと比較した際にはどうにもならないほど「もっさり」と分厚くなってしまっています。
もちろんパーツの裏側から薄く削り込む方法もあるにはありますが、すべてを均一の薄さに削り込むのは限界がありますし、そもそも「そこ」にこだわり続けるのは、あえてはっきり言わせていただくと不健康極まりなし。
それならば、別売の専用ディテールアップパーツセットに付属している極薄なエッチングパーツを使用して組み上げたほうが、キット製作の時短にも繋がるし格段にリアルに仕上がる……というわけです。


要は「そのための専用ディテールアップパーツセット」であり、「ここにお金を落とす価値は十二分にある」と断言してしまいましょう。
というわけで、別売専用ディテールアップパーツセットの同時購入もぜひご検討していただきたく思う次第です。
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