アメリカを代表するプラモデルメーカー “AMT”

アメリカのプラスチックモデルメーカーである“AMT(エーエムティー)”は、Aluminum Model Toysの略称で、1948年にミシガン州で弁護士のウェスト・ギャログリーにより設立されました。
二次大戦の戦勝国であるアメリカと言えども、戦後初期における新車は入手困難。そこでAMTは《プロモーションモデル》というコンセプトの元に、「実際のクルマの精巧なミニチュアモデルを提供することにより、実車の購入希望者がまるでショールームにいるかのように見て触れることができる」という楽しみを与えることとなったのです。
戦後のアルミニウムは安価に入手でき、さらに、ギャログリーとフォードとのつながりにより、1948年型フォード チューダー セダンのレプリカがプロモーションモデルの第1弾として製造されることに決定。
そして、1/25スケールでアルミニウムを鋳造し、在庫の実車用フォードの塗料で塗装された同モデルは、フォードのディーラーに納品され貴重な販売ツールとなりました。
それと同時に、なんとも皮肉なことに、AMT最初のアルミニウム製品は最後のアルミニウム製品となったのです。
というのも、会社が設立されたばかりの頃、AMT初期従業員のひとりがスライド金型を考案。これにより、より複雑な形状(たとえばモデルカーのボディなど)をプラスチックで一体成形にて製造できるようになったためです。
こうして1950年代〜いま現在にかけて、AMTの快進撃は続いていきます。その歩みはモデルカーだけでなく『スター・トレック』などのキャラクターモデルとの両輪によるものですが、各時代のアメリカにおける、最新のカートレンドがAMT製品としてほぼすべてラインナップされてきたと言っても過言ではないでしょう。



ただし──日本人からするとどうしても二の足を踏んでしまうのが、そのどれものモデルカーが“1/25スケール”にて製品化されている点です。
日本の市場で人気を誇るプラスチックモデルのモデルカーと言えば、国際統一スケールに基づく1/24スケールがもっともポピュラーであることはいまさら説明するまでもないでしょう。
それなのになぜ、AMTは「独自スケール」とでも言うべき1/25にこだわり続けるのでしょうか? それは、AMTだけではなく、アメリカという国全体を俯瞰して眺めなければ結論へ到達しないはずです。
アメリカは経済力や軍事力において世界トップの国です。しかし「単位」の取り扱いに関しては世界ワースト1位と言えるほど非効率で、遅れていることをご存知でしょうか?
というのも、アメリカにおける単位は世界標準のメートル法の単位(メートル、グラム、リットル)が主流ではなく、ヤードポンド法の単位(マイル、ヤード、バレル、ガロン、ポンド、オンスなど)が主流であり、下手をすれば両方の単位がいっしょくたに使われているのです。
AMTがモデルカーで展開している1/25スケールはまさしくこのヤードポンド法の単位に基づくものであり、アメリカ以外の国からはどうしても「異文化」として見られがち。
ただしアメリカという国自体がいまなおヤードポンド法を採用している以上、アメリカの筆頭プラスチックモデルメーカーであるAMTとしてはやはり1/25というスケールにこだわりとプライドを持ち続けるしかない……というわけです。



もっとも、「よし、オレはこれからアメ車のキットを組み立てるんだ!」というある種の開き直りにも似た気分で1/25スケールキットと向き合うことができるならば、アナタはきっと幸福へと続く扉を開けることになるはずです。
「これぞメイド・イン・アメリカ!」1963 シェビーII ステーションワゴン カスタムキット(3in1)
というわけで、今回プラッツ代表から「これをブログ化してほしい」と頼まれたのが、1/25 1963 シェビーII ステーションワゴン カスタムキット(3in1)と、1/25 2021 ダッジ チャージャー パシュート ポリスカー。
片や牧歌的でヒストリックな1台、片や近代的でマッシヴな1台と正反対な車輌のキットですが、そのどちらもAMTの新製品。1/25というスケールに対し後ろめたさなど一切持たず、新旧を問わず続々とアメ車の新製品をリリースしてくるあたりがいかにもAMT的だと言えるかもしれません。
まずはそのパッケージ。「これぞメイド・イン・アメリカ!」と言わんばかりのパッケージで、この大味すぎる雰囲気や、高さが分厚く横幅が短い独特のサイズのパッケージデザインに対し、ワクワクできるかどうかは結構な運命の分かれ目(?)かもしれません。
それでは、1/25 1963 シェビーII ステーションワゴン カスタムキット(3in1)から見ていきましょう。

実車はアメリカのジェネラルモータースが1962年から1988年までラインアップした、シボレーのシェビーIIノヴァです。
当時のライバル、フォードのファルコンに対抗する車種として開発され、初代の第1世代モデルは2ドアのセダン、ハードトップ、コンバーチブル、4ドアのセダン、ステーションワゴンをラインアップ。エンジンは4気筒の2.5リッターから直列6気筒の3.1リッター、3.8リッター、さらにV型8気筒の4.6リッターと5.3リッターの各エンジンが用意されていました。1966年には第2世代に、1968年には第3世代にとモデルチェンジが続けられ、シボレーのコンパクトカークラスの主力車種としてコンスタントに人気を集めたのです。
このキットは新金型を追加した形態で、シェビーIIの中でも人気の高いステーションワゴンタイプをモデル化しています。ボンネットの下にはエンジンを再現しており(エンジンはストックタイプのみならず、V8エンジンなど計5種から選んで組み立てていただくことが可能です。ただしカムカバーにまで銀メッキが施されており、真面目に組み上げようとするとメッキ落としが前提になりますが……)、さらに、このキットではリアに牽引できるトレーラーも用意されるほか、ガソリンタンクやツールボックス、ヘルメットなどのアクセサリーパーツも豊富に用意。
加えて、フロントグリルなどもストック仕様とカスタム仕様をセットするなど、潤沢なカスタムパーツが楽しい1台で、創造力豊かな仕上げが楽しめるキットです。
また、タンポ印刷で白帯を塗装してあるホワイトリボンタイヤの再現性も、このキットの見どころのひとつと言えるかもしれません。
2011年にモデルチェンジした第6世代チャージャー
続いて、1/25 2021 ダッジ チャージャー パシュート ポリスカーについて。

アメリカのクライスラーがダッジブランドで展開するパワフル4ドアセダンがダッジ チャージャーです。最初のモデルが誕生したのは1966年で、2ドアのファストバックボディデザインを採用していました。モデルチェンジを繰り返しながら1987年まで生産され、一旦その歴史は幕を下ろしていましたが2006年、4ドアセダンの車両として復活。
チャージャーとしては第6世代に当たるモデルは2011年にモデルチェンジ。2021年モデルはエンジンに5.7リッター、6.4リッター、6.2リッター スーパーチャージャー装備などをラインアップ。4WDタイプも用意されるなど、豊富なバリエーションも人気を集めました。使いやすい4ドアセダンボディにパワフルなエンジンを搭載したチャージャーは一般ユーザーのみならず、警察車両としても採用され活躍しています。
キットでは、ポリスカー仕様ならではのルーフのライトバーやフロントウインドウ両サイドに装備されたスポットライト、さらに、フロントのガード、室内の特殊装備なども細かく再現されたフルディテール仕立て。もちろん、エンジンも詳細にわたりパーツ化されています。最新のチャージャーのスタイルを実感たっぷりに再現した4ドアセダンボディは前後パネルを別パーツでモデル化し、形状のみならず、そのディテールもしっかりと表現。
さらに、シャーシ下面、足周りなどの立体的な再現も見逃せません。塗装が面倒なウィンドウの黒枠部分があらかじめ塗装処理されているのはうれしいポイントですし、ボディに描かれるストライプはデカールでセット。パワー溢れる4ドアセダンのスタイルが楽しめるキットです。
というわけで、“1/25スケール”というアメリカ縛りを一度忘れて、もう少しおおらかな態度で挑むことができれば必ずやアナタ向きのモデルが見つかるはずです。
AMT製品は逃げも隠れもせずに、アナタがドアを叩く日を待ちわびています。
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